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春を迎える

ご無沙汰しております。一年はあっという間。今改めてこの一年を振り返ってみますと、昨年三月の震災を受け、北関東支部でもいくつかの変化がありました。
幸い教場は難を逃れたものの、家屋敷に被害を受けた方、親御さんが被災された方、ご事情により郷里に帰られた方などもいらっしゃいました。
一ヶ月はお稽古をお休みとし、その後再開致しましたが、ガソリンの供給状況にもしばらく問題があり(北関東支部への交通手段は車となります)、元の状態に戻るにはやはり数か月を要したでしょうか。

その後、私事で恐縮ですが、何人かの近しい人を看取るなど、様々な事柄を巻き込みつつ怒涛の日々が流れました。振り返ればいつも走っていた気が致します。
みなさまの一年は、どんなふうだったのでしょう。幸い多き日々でありますれば、私にとりましてもうれしいことこの上ありません。

人間の暮らしにどんな変化があろうと、日はまた昇り、季節は廻り、厳しい冬が終わればまた春がやってきます。万物が命の輝きを取り戻す春の到来を間近に感じつつ、今日は久しぶりに静かな一日を過ごしております。
いえ、やることがないわけではありません。むしろ宿題はたまる一方で、どこからその山を崩すべきか、高い壁を前に途方にくれるような気持ちも去来します。



越前市の山懐に、御誕生寺という小さなお寺ができてどのくらい経つでしょう。その存在は、曹洞宗の僧侶だった伯父を通して知りました。時折「御誕生寺だより」なる小冊子も送られてきました。
ご住職であられる板橋興宗禅師様は、宗門の本山の一つ総持寺の管長職まで務められた老僧で、その見識の深さとお人柄を慕い、全国から雲水さんが集まっておいでです。(禅師様には著作もたくさんおありゆえ、機会あらばご一読をお勧め致します。)

昨年、家族との旅の中で、念願叶い、その御誕生寺にお参りすることができました。何度か訪問させていただいたことのある和紙の里の程近く、まだ新しい本堂はしっとりと雨に濡れ、あたりの風景に溶け込んでいました。
このお寺は、高祖瑩山禅師のご生誕の地に、板橋老師が堂宇建立を発願して成ったものです。名のある古刹ではありません。
でもそこには、多くの方の浄財が形となって姿を現わし、日々本当の修行が行われているのです。
そして、人間の修行を横目に、「お悟りを開いた状態」と禅師様もおっしゃる猫たちが、実にのびのびと暮らしています。その数およそ30匹とか。

お坊さんたちと猫たちは仲良しです。托鉢に出る前の整列の間に、猫が一匹寝そべります。本堂の前で、猫さんが番をします。僧堂の横に、何匹もが団子になって眠っています。なんとほほえましい風景でしょう。
禅師様は、猫がたいへんお好きなのです。言葉であれこれ考え、事態をますます複雑にしてしまう人間に対し、「今」しかない猫たち、「今」に生きる猫たちが、どれほど軽やかなことか。まさに「猫は悩まない」(板橋老師の一著作のタイトル)、です。

禅師様は、言葉を重用しすぎる人間に警鐘を鳴らします。折形にも言葉はありません。そこにあるのは、思いであり、願いであり、祈りです。
心が込められたものすべてに、祈りが宿ります。そしてその祈りは、必ずや相手に届くことと思います。たとえ今生ではなかろうとも、来世か、また次の世か、いつか必ず、その人の魂に届くのではないでしょうか。

そうして今日も、どこかで、どなたかが、冷たい水の中、チリを取り、紙を漉き、折形に向かいます。まだ見ぬ方のために。かけがえのない一人のために。
大切に作られた和紙を用い、ものの形のみならず心を包み込んだ折形は、言葉も、国境さえも軽々と超えて、白く輝くことでしょう。



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   < お知らせ >


特別講演


・ 朝日カルチャーセンター名古屋
  電話 052−249−5553

3月8日 木曜日 13:00〜14:30 特別講義
和紙に見る日本の美意識(第二回)
折形の原則と日本の歳時記:24節気と72候:端午の節句の解説

3月8日 木曜日 15:30〜17:30 折形実技
入学祝い包み 鶴の箸置きなど

3月9日 金曜日 10:00〜12:00 折形実技
月謝包み、端午の節句祝い包みなど



● 一般入門コース(年間12回コースが基本)講師 山根一城
・ NHK文化センター横浜ランドマーク教室 
  電話045−222−1110

  定例の折形礼法教室を開催
  基本的に 第1火曜日 13:30−15:30
  毎月一回のクラスを半年ごとに受付。
  1年間 10〜12回で折形の基本を学びます。

・ 和紙の専門店 大直(おおなお)
  吉祥寺ロフト内4F(東京都武蔵野市)
  電話:0422−23−2673

  毎月1回 第一月曜日 10時40分〜12時40分
  申し込みは一回ごとに受け付け

・ エコールプランタン
  電話:03−3567−7235(東京都中央区銀座)

  毎月1回 第二木曜日夜 19:00〜20:30



● その他の地区での受講 講師によるセミナーの開催
・ 首都圏、 新潟市 及び 佐賀市でのセミナー

山根折形礼法教室講師によって基礎コースのセミナーが開催されています。お問い合わせは 山根折形礼法教室にお願いいたします。講師個人の電話をご紹介いたします。

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行く季節

季語「山笑う」の季節が、行き過ぎようとしています。
こんもりとした表山、なだらかな稜線を描く裏山、日の出を演出する東山、それぞれのいたるところに、ぽんぽんと配置された山桜。その花の白が薄くなり、やがて緑に埋もれるようになれば、周囲の新芽も力強さを増した証拠です。季節は、スイッチバック式に初夏へのぼっていくでしょう。

車で少し行くと、川面に、両側から手を伸ばすような格好で枝を差し出す桜並木があります。数年前、その道に、一日一日表情を変える風景が見たくて、毎日通いました。
満開を迎えた日、草色やわらかな岸辺に腰を下ろして釣り糸を垂れる人がたくさん見られました。
誰もが無言で、静かに水面を見つめています。でも一番に感じているのは、きっとまわりの桜のことです。重そうなくらいゆっさりとした花枝が、その人たちを見守るっていました。
それを端から眺めるわたしは、なんとなくしあわせな気持ちになったものです。

数日すると、古い木の橋げたにも欄干にも、花びらがたくさん降り積もり、まるで舞台装置の一角のようでした。
道端で忙しそうに箒を動かす人がいましたが、こんな軽くてきれいなものを集めるなら、掃除だってきっと楽しいに違いありません。

その日、ふだん何の動きもない老いた川が、ゆっくりと、一面の花びらを流れに乗せていました。花筏です。いつもは、上流も下流もわからなくなるような川なのに。

あの時の風は、今頃どこを吹いているのでしょう。


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さて、いよいよあさって29日から、京都は知恩院山内、知恩院に向かう広い参道手前左側にある得浄明院にて、「山崎吉左衛門 檀紙作品展 〜和紙の品格/檀紙の魅力〜」が始まります。
善光寺の京都別院という由緒あるお寺さんで、普段は非公開ですが、壱初の開花に合わせて、毎年一般公開されています。

今年はそこに、ご住職でいらっしゃるお上人様のご依頼により、越前の山崎さんの檀紙が展示されることになりました。
そしてその檀紙の魅力を生かすものの一環として、山根折形礼法教場の折形が、勿体なくもお内陣横に置かせていただける運びとなったのです。

山根宗主渾身の、公家・武家に伝わって来た格調高い折形。そして茶道教授でもある北関東支部長の、茶席関連の折形。
連綿と続く檀紙の最高峰たる山崎家の、和紙そのものの魅力・檀紙を用いた作品の美しさとともに、この機会にどうぞごゆっくりご鑑賞ください。


   日時  4月29日〜5月13日   午前10時〜午後4時

   於   得浄明院  京都市東山区知恩院山内林下町  tel.075-561-3767
             http://www.tokujomyoin.or.jp/             


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<現在募集中のセミナー>


(本部支部の講座につきましては、随時メールかお電話にてお問い合わせください。)

■大直 吉祥寺ロフト店「折形」入門(定員8名様)

【講 師】山根 一城宗主
【時 間】吉祥寺ロフト4階 和紙の店 大直
【受講料】1回 5,250円(税込)
【教材費】和紙各種数枚、水引など(各回ごと・実費500円〜1,000円程度)
【持ち物】筆記用具、はさみまたはカッターナイフ、紙幣(千円札・一万円札)

(原則第一月曜日)

【お問い合わせ】
詳しい内容、お申し込み方法については、お電話にてお気軽にどうぞ。

和紙の店 大直
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-10-1 吉祥寺ロフト4F 
TEL・FAX 0422-23-2673



■都内のカルチャーセンター

エコールプランタン「銀座」(電話:03−3567−7235)

講師 山根 一城宗主

日 時 (木) 19:00〜20:30  (原則第2木曜日)

受講料 3ヵ月3回 税込 12,600円 (材料費込)
※入会金不要

教材費 テキスト代 税込 1,470円



桜の力

久しぶりに地元の桜道を何本か通りました。景色ががらっと変わっています。
枝という枝すべてに薄白い花がついて、頭上が明るいのです。桜に挟まれた川面にはたくさんの花びらが落ち、澱んだ色の水が、思いがけない日本画の(やはり油絵ではなく)落ち着いた背景になっていました。

なんということでしょう。いつもは地味な風景が、こんなすてきな眺めに変わっていたのです。
周りには、川べりをそぞろ歩く老夫婦、立派な望遠レンズを覗き込むカメラマン、釣れそうもない糸をのんびりと垂れる釣り人。いろんな人がいます。こう魅力的とあっては無理もありません。
車の窓を全開にしてみましたが、残念ながら花びらは入ってきませんでした。

大学の痩せた桜は、いつのまにか豊満な美女に成長し、夕刻、その下で歓談する人たちを楽しそうに見ていました。
桜があることで、人が集まります。会話が増えます。世界が変わります。大きなエネルギーが、桜の周囲にはあるに違いありません。当の桜は、何も自覚していないのでしょうが。

不思議な花です。本数が多いということもありましょうが、これが満開になると、あちらこちらでいろいろな人の気持ちが動きます。
木の下を歩いてみようとか、写真を撮ろうとか、お酒を飲もうとかお弁当を食べようとか。

誘うのですね。誘いに乗ってもいいのだと思わせるのですね。 黄色いイチョウの下で宴会をする人はいないのに。(わたしは、機会あらばおやつくらいは是非食べたいと思います。)

家の近くの里山は、「山笑う」(俳句の季語)の時期になっていました。これについてはもう、わたしは表現する言葉を持ちません。見てくださいとしか言えません。この季節のこの山は、日々表情を変え、その度にわたしは、毎年「おお、今日が最高。」と、思い続けるのです。
期間にして一週間。いえ、十日あるかもしれません。「今日が最高」は、意外に長く続くのです。うれしいことです。

今年は、3月以降再び伯父の家への滞在が長く、家の近くの春景色をずいぶん見逃しています。見逃す時間が長くなっています。
わたしの知らないところで春が来て、春を謳い、春は行ってしまうでしょう。
いつのまにか、冬は気配を消しました。大好きな「冬木立」などという言葉は、既にまったく似合いません。

あ。雨音です。
夜、静かに聞こえてくる冬の雨音が好きなのですが、それを待っていた時期が長かったにもかかわらず、やっと聞いたと思えば春の雨になってしまいました。

陰陽で言えば、夜は陰、雨も陰。夜に雨は、やはりお似合いです。


(下の写真は地の花たち)

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早春の花

木蓮とこぶしってどう違うの?と、毎年何人かの人に尋ねられます。わたしは決まって、「白鳩みたいに、花が肉厚で輝いてるのが木蓮で、白い蝶々みたいにひらひらしてるのがこぶし。」と答えています。

本当に、白木蓮のつぼみがいっぱいについた木は、白鳩がたくさんとまっているようで見とれてしまいます。いい天気なら、青空をバックに花がぴかぴか輝き、サテンの布のようでもあります。
こぶしは、雰囲気がどこかいい加減。でもかわいらしい。つぼみが赤ちゃんの握りこぶしのようだから、この名がついたのだそうです。

それにしても。わたしは毎年思います。春先の気まぐれな天候を上手にくぐりぬけるのは、木蓮とこぶしにとって至難の業だと。水分の多いこの花たちは、霜に遭うと、一気に茶色くなってしまうのです。
ここ数年、きれいに花になった木蓮を見たことがありません。気の早い陽気に誘われて美しいつぼみをつけても、やっぱりやってくる遅霜の朝に、茶色く首を垂れ、そのまま優美な花になることができません。このあたりは今年もそうでした。

それでもこぶしはまだ幾分逞しく、木に囲まれたり家に寄り添ったりして直接の冷気を免れたものは、今満開の花を咲かせています。おめでとう、よかったねと言いたくなります。
木蓮はお気の毒。花となっても、茶色い縁取りが痛々しいのです。つぼみになる時期を、注意深く選べたらいいですね。

最後になりましたが、この度の地震や津波、原発の事故によって被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
単純なたとえではありますが、霜枯れた草木も花も、また新しい萌芽を見、いつかきっと美しい花をつけることでしょう。同様に、自然による災害に遭われても、様々な自然による力と恵みから再び勇気を得られ、皆様が、少しでも早く平穏な生活を取り戻されますようお祈り申し上げております。
困った時はお互い様。そのような気持ちで、人間同士も淡々と助け合っていきたいものです。


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(上の写真は、都会の道端で育てられている花たちです。)

   
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空色水色

今朝は、ずい分濃い霧が出ました。外気温−2度。7時と言う同じ時刻で、この車の表示、数日前は10度以上あったのですから、久しぶりのマイナス表示が一瞬信じられませんでした。
車のワイパーは、確かに窓に張り付いた氷をかいています。 白く視界の限られた世界を、まっすぐに続く道を信じて突き進みます。

街が近づいてきた頃、意外にも、あんなに分厚かった霧が、空のほうから晴れ始めました。生まれたての空色が、とてもきれいです。
昔持っていたクレヨンだかクレパスだかの中に、「そらいろ」という色がありました。それがたぶんこんな色だっでした。
今でもその名前は残っているでしょうか。「みずいろ」に変わったような気もします。あの、クレヨンの巻紙に書かれた文字が。

本当は水に色はありません。水面に空を映した時、あの色になります。厳密には、光の屈折率などが関係してくるのでしょう。
かつて「みずいろ」と命名した誰かの住んでいた場所は、空が広くてきれいなところだったに違いありません。だから、バケツの水にも、川の水にも、薄青い空の色が宿っていたのです、きっと。

帰りがけ、周りを桜の木に囲まれた池から、もわもわと水蒸気があがっていました。まるで大きな露天風呂です。水面をすべる水鳥も、いつもより気持ちよさそうに見えます。

霧は、やがて山の麓に層を作ってじっとしているだけとなり、車の窓越しの光は、着ている毛糸にたまってぽかぽか温かくなりました。
エンジンを止めると、なんとうぐいすがいい声で鳴いているではありませんか!
陽射しはのどかでやわらかく、辺りの明るさに気持ちが少しついていっていませんが、上空はますます美しい空色。水色。

折形に用いる合わせもみ紙に、それはそれは美しい薄水色があります。そこに金銀がちりばめられたものもあり、見れば胸がときめきます。
その涼しげな色が、これからの季節にぴったりの気がします。さて今年は何に使うでしょう。

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≪スケジュール≫

3月7日 (月) 
4月4日(月)

(原則第一月曜日)

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講師 山根 一城宗主

日 時 (木) 19:00〜20:30  (原則第2木曜日)

受講料 3ヵ月3回 税込 12,600円 (材料費込)
※入会金不要

教材費 テキスト代 税込 1,470円

テーマ  
     <3/10>万葉包み、箱もの・ボトル包み(本・ワイン包み)
  
 (四月から新規講座も始まります。)


プロフィール

山根北関東白妙子

Author:山根北関東白妙子
和紙と折形、人と自然を愛する、
山根折形礼法教室・北関東支部の管理人の一人です。
どうぞよろしくお願い致します。

北関東支部へのお問い合わせは、
支部長飯田猷子まで。
029-867-2207

アドレスはこちら
shaloneko@ybb.ne.jp


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